私に負け続けていたブル男がキレた。
そして持ってきていたアタッシュケースを、台にドンと乗せて、いきなり開けた。
(・o・)!!!!!
開けられたアタッシュケースの中には、びっしりと米ドル札が入っていた。
映画とかでよく見るやーーーつ!!!身代金の受け渡しとかで渡されるやーーーーつ!!!
このとき、初めて私「あ、ちょっとやばいところにいる・・・・?」と思った。
ドン!ドン!!ドン!!!と、札束を取り出して重ねていって、
ブル男「ここに10万ドルある!!!!私は次のゲームでこれを全部賭ける!!」
と興奮して叫ぶブル男。
(えっ、マジかよ何いってんだよお前・・・ただのゲームじゃん・・・)
それを見た兄が、落ち着いた様子で私に言う。「あなたは今いくら現金を持ってる?」
はっきりとは覚えていないが、確かタイバーツが約1万円分くらいと、豪ドルが20ドルあるかないかくらいだった気がする。
「じゃあ、それを全部賭けようか」と兄が言うと、ブル男がさらに怒り出す。
「たったそれだけ!?
私はこんなにたくさんの金額を賭けるのに!!!
それしかないと言うのか!!!
お前も同じくらいの金額を賭けるんだ!!!!」
いや・・・ただの遊びでやっただけだし・・・私これなくなったら帰れないし・・・・と、言うと、兄がブル男に「ちょっと彼女と話してくる」と言い、持ち手のカードを持ったままの私を部屋の外に連れ出した。
さっきまで冷静に喋っていた兄が、興奮した様子で
「見ただろ!?さっきのお金を!!あれが手に入るんだよ!!イェエエエイ!!!」と言い出す。
いや、でも私あんなたくさんお金いらないし・・・と言うと
「いらない!?遠慮することはない!もし勝ったら、7割を君に、3割を僕に。どう?いいだろ、それで。今持ってるカードは?見せて!」
2枚のカードを見せると、合計がぴったり21だったか11だったかで、完全に私の勝利が確定していた。
Yes!!!!!!! と、ガッツポーズをする兄。
「いやー、でもあんな大金要らないし、私もう帰りたいから、これで終わりでいいよ。もうやめようよ。」と言った。
すると兄の態度が急変。
ここで初めて私は本気でビビった(遅いよ)
私「そんなこと言われても・・・お金ないし・・・ゴニョゴニョ」
兄「クレジットカードはあるか」
私「ある」(ビビって素直に言うバカな私)
兄「よし、じゃあそれでキャッシングして現金を持ってこよう」
当時の私は、クレジットカードは持っていたものの、ワーホリのエージェント契約のときに作らされたものだった。田舎者なので「クレジットカードはどんどんお金がなくなる怖いもの」という認識だったので、ワーホリ中もクレジットカードは使わず、ただ持っていただけ。
なのでもちろん、「キャッシング」というシステムなんて知らなかったので、当時は兄が何を言ってるのかよくわからなかった。
当時の心境は「え・・・金なんて賭けたくない・・・なんかもう怪しさしかないじゃん・・・でも早くここから去りたい・・・どうしたらいいんだ・・・・もう嫌だよ~・・・・なんなんだよぉ・・・」と、葛藤していた。
部屋に戻って、兄がブル男に説明する。
「彼女はまだ若いから、そんなにお金を持っていない。だから、これからATMに行って、おろせるだけおろしてくる。足りないぶんは、私が集めて必ず用意する。だから少し時間がほしい。明日の14時に、またこの続きをここでするのはどうだい。今それぞれが持っているカードは、そのままうちの金庫に、この状態でしまっておく。明日、お金が準備できたら、ここでこのカードをオープンするんだ。」
ブル男も少し落ち着いていたようで、「わかった」と言い、アタッシュケースを閉じる。
「じゃあ、また明日。楽しみにしているよ。」と、さっきとは打って変わって静かに帰っていった。
ブル男が帰ったあとすぐ、家の前にタクシーが来た。
バンコクで私に声をかけてきた姉妹二人が、ニコニコして待っている。
兄が「これから二人と一緒にATMに行ってお金をおろしてくるんだ。できるだけたくさん下ろすんだ。私もこれから、足りないぶんを友達にお願いしに行ってくる。これが私の電話番号だ。明日、また14時に続きをするから、迎えに行くから、明日電話をしてくれ」
姉妹二人に挟まれる形でタクシーに乗せられ、少し走ったところにあるショッピングモールのATMにそのまま連れて行かれた。
両脇にピッタリと二人がついて、私が逃げないようにしている。姉妹はニコニコして楽しそうだが、こちらはもうなんとか逃げ出せないかと気が気じゃない。
「さっ、カードある?お金おろして♪」「聞いたわよ、すっごい大金を賭けたらしいじゃん、さっきの人!あれが手に入ったら、私達大金持ちよ~~~!!!!」とキャッキャ言っている。
逃げ出そうと思ったけど、もしかしたらこの二人の他にもグルが周りにいるかも知れない。
変なことしたらもしかしたら刺されるかもしれない。パスポートとかも取られるかもしれない。
そう考えたら、なんだか身動き取れなくなり、言われるがままにクレジットカードを取り出して、ATMに差し込んだ。
暗証番号をいれて、あとは二人が操作する・・・・が、何度やってもエラーになる。
どうやってもキャッシングが出来ないようだ。「えー、なんで~~??」と二人が一生懸命色々トライするも、どうやら使えないようだ。
なんだか知らないけどラッキーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
「ねえ、オーストラリアにいたのなら、銀行口座持ってないの?インターナショナルアカウントとか」
持ってる・・・・
当時、新生銀行が海外でも口座から引き出しが出来たので、それを持っていた。
なんでまた正直に言ったのかと、今だから突っ込みたくなるけれど・・・・
当時は、とりあえず金ださないと終わらないような気がしていたので、素直に言ってしまった。
そして素直に残額10万円のうち9万円を引き出された。
1万円を残されたのは、姉妹二人が「これくらいあればタイで楽しめるよ」という、要らない気遣い笑
9万円を二人に渡し、ショッピングモールの外に再び連れて行かれたが、もうその時は二人は私の両脇にはくっついていなかった。
タクシーを止めて、乗せられた。二人は乗らず、運転手に何か言っている。
「兄の電話番号はわかってるよね?明日、また電話して!このお金は兄に渡しておくから!運転手には、バンコク市内に向かうように言ったから、今日はこのまま帰ってね!」
やっと解放されたのだ。
今振り返ると・・・
本当にね、初めてのことばかりで、すっごいビビったし、とにかく殺されるんじゃないかと最悪のパターンを考えてしまってね・・・
なので、お金さえ出せばなんとかなるのではと思って、素直に従ってたんですよ。
とりあえず命とパスポートだけは守らねば!と思って。
続きます。
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