初めてのタイで拉致軟禁された話③

兄、登場

 玄関横の階段を上がっていこうとする兄に、妹たちが声をかける。

「おかえり!今ね、お友達が来てるの!紹介するね!」と、挨拶するも、兄は一度部屋に行って着替えたいようで、あっさり去っていった。今思うと、きっと「よし、またカモが来たな」と思ってたに違いない。

少しして、着替えた兄がやってきて一緒に食事をし始めたので、改めて挨拶をした。あんまり背が高くなくて、太ってはいないけどちょっとぽっちゃりになり始めた感じ。30代半ばくらいだっただろうか。

彼は飲み物やご飯のお替りを私に勧めてきてくれた。ありがたいけど、すでにもうお腹いっぱいだった私は、遠慮しながら、彼の英語を一生懸命聞いて会話をしていた。

 

私が理解したのは、

・彼は豪華客船のカジノのディーラー

・毎月船に乗って何日か働き、ここに戻ってくる生活

・姉妹は、一人は妹(だったか姉)だが、一人は従姉妹に当たる

 

そこから、カジノの話になる。

タイに来る前、私はオーストラリアでワーホリをしていた。シドニーにあるカジノ「スターシティ」でよく無料のコーヒーやジュースを飲みに行きながら、ちょっとだけスロットをやっていた経験はあった。でも、ディーラーがいて、対戦相手がいて、というゲームはやったことがなかった。

 

「ジャックポーカーというゲームを知ってる?」と言われた。もちろん知らない。

後から知ったけど、そもそもそんなゲーム、ないっぽい。

ブラックジャックとポーカーを足したようなルールだという。そもそも、そのどちらも私はやったことがなくてルールも知らない(今も知らない)というと、教えてあげるよと言われた。

ざっくりと言われた説明だと「2枚のカードの合計が21に近いほうが勝ち」というルールらしい。

へー(あまり興味がなかった)。

 

実際にどんなふうにやるか見せてあげるよ!こっちに来てみて!

というのでついていくと、6畳くらいのお部屋に案内された。そこにはまさにカジノのカードゲームをやる緑の台が置いてあった。

 

・・・今思うと、いろいろ危険なことをなんの疑いもなしにやっていたな~と・・・・。

知らん人と一緒にタクシーに乗ったり、すでに用意されている食事に手を付けたり、男と二人きりで個室に入っていったり・・・・

今はもうそんなことしないけど、当時はあまり深く考えてなくて、「いい人~!」とか「東南アジアの人ってこんな感じなんだ!」と、解釈して受け入れておりました。

密室でカードゲーム

ディーラーの兄は簡単なカードの説明をしたあと、続けてジャックポーカーについても説明し始めた。専門用語は分からないけど、なんとなく雰囲気はつかめた私。

ジャックポーカーの詳細は忘れたが、持ち手のカードから2枚出し、合計が11だったか21だったかどちらかに近いほうが勝ちというやつ。

試しにやってみようかというので、対戦相手がいると仮定して「こういうときはこのカードを出すんだよ」など、教えてもらいながら実際にやってみて、流れも掴んだ。

へえ~、こんなゲーム知らなかったよ~と言いながら、ゲームを続けていると、兄からこんな一言が。

 

「これで、100%勝てる方法があるんだよ。君はトモダチだから、トクベツに教えてあげるよ」

 

えっ、なにそれ(興味ねぇな・・・・)

と思いつつも、ニコニコして説明を始めたので、とりあえず聞いている。

カラクリはほんと単純で、ディーラーと自分がグルになり、対戦相手を負けさせるというだけのもの。ディーラーがカードを渡す際、アイコンタクトを送る。そのアイコンタクトが来たとき、「お前のほうが勝てるまたはあいこだよ」っていう意味。

(すみませんルールそのものを結構忘れてしまっているため、ルールとカラクリの辻褄が合わない部分があるけど、そのへんはゴメンナサイ!)

 

今度はイカサマした場合のやり方をレクチャーされ、どんな感じでアイコンタクトが来るかなどを覚えさせられた。

「こうやって、勝っている人は多いんだよ」と。

ふうん(相変わらず興味ない)

 

そろそろ帰りたいな~と思い始めていた。バンコクの中心から結構離れていたから、そろそろ戻って、買い物して、友達と合流したかった。

ブルネイから来た男

ピンポーン♪

誰かが来たようだ。妹たちが対応している声が聞こえた。

ガチャっとドアがあき、背の高いひょろっとした色黒のアジア男が通された。年齢不詳だが、50代くらいに見えた。白い服だったのをよく覚えている。

彼は兄と握手しハグし、挨拶を交わしたあと、紹介された。

「彼は私の友人でね、今日久しぶりに会いに来てくれたんだ!紹介するよ、こちら私の友達のりょうだよ、日本人なんだ」

こいつら簡単に友達だって言うよな・・・って思いつつ、その男とも挨拶を交わす。

ブルネイから来たというその男は(以下ブル男)、カードゲームが大好きだという。

ブルネイという国名を初めて聞いた。場所もわからないし、どんな国かも知らなかった。

(後日、この件で私は「ぜってーブルネイになんか行かない!!」と心に誓うわけだが、結局2019年に行くことになる笑→そしてめっちゃ気に入るw)

 

兄が続ける。「今、ちょうど彼女にカードゲームを教えていたところだよ!あっ!そうだ!せっかくだから、練習も兼ねて二人でゲームをやってみない?」と提案。

え、めんどくせえな。と思ったんだけど、まあちょっとなら・・・・とやってみることにした。

 

最初は、私が実践が初めてなこともあり、たどたどしくスピード感もなく進んでいったが、3,4回やっていくと慣れてきた。

すると兄が、「じゃあ今度は、実際にお金を賭けてやってみようか!1ドルで大丈夫だよ」と。

タイバーツしか持っていないと伝えると、「大丈夫、練習だから、口で言うだけでいいよ」というので、「じゃ、1ドル」と言ってスタートした。

 その時だった。

兄がアイコンタクトで、イカサマしようぜ!というサインを送って来た!!!!

えっ、と思ったが、練習だしいっか。と、そのサインに応えるように、私もカードを出し始めた。

もちろん、それからは私が勝つか、引き分けのゲームになる。

へえ~、こんな感じで勝っていくんだな~すげえ世界だな~と思いながら、ゲームを続けていった。

最初は1ドルと言っていた掛け金も、どうせ練習だからと、気づいたら100ドルくらい賭けたことになっていた。

 

だんだんブル男がイライラしているのに気づいた。そらそうだよな、こんな小娘に負け続けるんだもん、イラつくよな。

でも私はそろそろ帰りたい。もう帰ろうかなと、それを伝えようとしたときだった。

 

ブル男がキレた(゜o゜)

 

 

 

・・・・ちなみにこの時点で、ブル男がキレるまでは、私は疑いもなく楽しんでいたよ・・・笑

そしてブルネイめっちゃいいところだったからまたいきたいよ・・・

 

 

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