初めてのタイで拉致軟禁された話⑤ 最終話

海外旅行
奪われたお金を取り戻すために

「サイアムまで行ってください!」と、運転手に伝える。

はっ!もしやこいつもグルじゃねえのか・・・?とも疑ったけど、そんなことはなかった。

サイアムまでどれくらいかと聞いたら、だいたい40分くらいとのこと。

解放された安堵感もあったけど、まずは取られた9万円をどうやって取り戻そうかというのを考えていた。あれがないと、東京に着いてから家まで帰れないのだ。

途中で、タイ人の友達から連絡が来る。思ったより早く仕事が終わったから、今から会えるけどどこ?と聞かれたので、とりあえずMBKで合流することに。

 

友達に会った瞬間、それまで張り詰めていた気が緩んだのと、ふつふつと怒りが湧いてきて、

「ちょっと聞いてよーーーー!!!!!!」と、拙い英語で何があったかを説明した。

友達も、英語は完璧ではないものの、私が言ってることは理解できたみたいだけど、そんなに大事と感じてないようで、「バカだな~笑」と笑われた。

9万円よ9万円!!!!日本に帰って、成田空港から私どうしたらいいの!!!

と、ギャンギャン言ってたらめんどくさくなったのか、哀れんだのか「・・・可哀想」と言って、めっちゃたくさんのタイ料理を夕飯にごちそうしてくれた笑

 

このバンコク滞在は約3週間。この間、日本人の友達の家にずっと泊まっていた。

心配性な友達なので、このことを話すかどうか迷っていた。このときの思考回路は最悪のパターンを常に考えていて、「万が一、あの後ずっと私のあとを付けられてたら、この場所がバレて、友達も危険な目にあわせてしまうかもしれない・・・」とか本気で思っていた。

でも、成田からのお金がないので、お金を借りたいという気持ちもあった。

帰国まではあと4,5日あった。

だから、とりあえず明日、兄に電話をして、なんとか取り返しに行こうと決めた。それで無事に取り戻せたら、友達には何の心配もかけずに終わる。

 

この日はよく寝れなかった。

お金が足りない

 

翌日12時。もらった番号に電話を掛ける。

「・・・ハロー?」

でた!兄だ!

「今日のことなんだけど・・・」と言うと、

「ああ、ごめんね、今日16時からになったよ!今、僕の友達にお金を借りたりしてるんだけど、なかなか集まらなくて、もうちょっと時間かかりそうなんだよ。だからごめん、また15時ころ電話してくれるかな?」

 

わかった、と電話を切る。

いざというときの護身用に、ハサミをバッグに忍ばせていた。

 

15時。また電話をすると、「君がお金を少ししか用意できなかったから、足りないぶんがなかなか集まらない。ブル男には、今日はもう出来ないと伝えたから、また明日にしよう。またあした、14時くらいに電話をしてくれないか」と、一方的に切られた。

 

 

怪しい・・・

いや、もういろいろ十分怪しいんだけどさ。

さて困ったぞ。

 

友達の職場の先輩(日本人)に、相談してみようと思いついた。

当時20代前半の私には、20代半ばの年上のお姉さんはとても大人に見えた。

彼女はその日たまたま休みだったか早上がりだったかで、時間があったのですぐに会ってくれた。

 

すべてを説明し、今後私がどうしたらいいか迷ってるというと

私一緒に行こうか?」と言ってくれた。なんという心強い味方!!!

でも、全く関係ない人を危険なことに巻き込むわけにはいかない。

「でも、まず命が無事でよかったよ」と言われ、ほんとにそのとおりだと思いました。

お金も大事だけど、命がもっと大事、というのを改めて強く思い、冷静になれた。

話を聞いてもらえただけでも、全然気持ちが楽になった。

何か具体的な、お金を取り戻す解決策は出なかったけど、お金は諦めて、身の危険を第一にという気持ちが強くなった。

 

でも本心は

「お金は要らない、できればもう関わりたくない。でも出来るなら9万は返してほしい。」

それが本音だった。

 

 

結末は

 

翌日14時前。また電話をかけた。

ちゃんと電話には出るんだよな~、こいつ。

今日はどうするのかと聞いたら、昨日と同じようなことを言って来た。まだお金が集まらない、だからまた何時間後に電話してくれ、と。

昨日話しを聞いてもらって、冷静さを取り戻した私は、そこでカマをかけてみた。

「私の母が今日、日本から遊びに来るの。あなたに渡したお金で宿泊代とか支払うから、今すぐ返してほしいの」

すると

「Oh!お母さんが来るんだね!わかったよ、でももう少し待ってくれないか、今ちょっと忙しくて」

ぜってー嘘だろ(なんなら最初から全部ウソだろ)と思い

「もう少しってどれくらい?すぐに返してくれないから、今から警察に行くけど。」

と言ってみた。すると一気に慌てた感じになった、わかりやすい兄。

「えっ!警察?大丈夫だよ、すぐに返すから!あと1時間したら、電話してくれる?OK?」といきなり切られた。

 

それから、あの携帯番号につながることはなかった・・・・・・

 

くっそーーー!!腹立つわああああ!!!と、消化不良気味で幕を下ろした。

 

お金はどうしても必要だから、警察に行ってみようかなと思い「地球の歩き方」の最後の方にある、大使館などの連絡先をペラペラとめくってみた。

ふと「よくあるトラブルの被害」みたいな項目があったので、読んでみた。

・女性が声をかけてくる

・家でカードゲームに誘われる

・突然友人と名乗る男が現れる

・賭け金を騙し取られる

・全員グル

的なことが書いてあった。

いやこれ典型的すぎるじゃん!!!!!

いいカモ過ぎたよな自分!!!!

 

情けなかったよ笑

 

 

反省と教訓

 

あれ以来、初めての国に行く際は、その国でよくあるトラブルや事件の項目をよく読むようになった。

そもそも、日本で知らない人に声をかけられ、家までついていくというのは、子供のときに「危ないから駄目」と教わっていたはず。なのに!!あっさりついていってしまったのは、海外マジックと言ったら聞こえはいいが、命の危険が伴うのだ。

ついつい気が大きくなってしまうのもわかる。

それに国によっては、知らない人を家に招くのが普通という文化のところもあるから、すべてを疑ってかかり、厚意を無下にしてしまうのも失礼になってしまう。異文化交流の楽しみの一つでもあるわけだし、それがいい思い出となることだってたくさんある。

見極めが難しい部分ではあるけれど、「一人では車に乗らない」とか、常に危険に対してアンテナを張っておきつつ、楽しめれば一番いいんだけどね。

 

今だからこそ思うけれど、まずすでに用意されていた食事に手を付けたのも、なかなかチャレンジャーだったな。というか、それに何か毒とか睡眠薬とかが盛られているかもしれないという発想が全く無かったというのが事実。

ATMに連れて行かれたとき、逃げようと思えば逃げれたのかもしれない。けどビビって逃げなかったわけだけど、果たしてあれが正解だったのかどうかは今でもわからない。

逃げ切れたかどうかもわからないし、他に仲間がいたかもしれないし(でもきっとあれはいなかったな)。でも、思えば、あんなたくさん人がいるショッピングモールだったんだから、逃げて巻くことは出来たと思う。

 

今だから冷静に振り返る事ができるけど、ああいうときって、思ってる以上に思考が働かない

またいつ自分があんな経験をするかもわからないけど(できればしたくない)、そうなったときのイメトレって大事だなということを学んだ事件だった。

それからずっと、私が海外でトラブルに遭わないように気をつけていること↓

・知らない人には(できるだけ)ついていかない
・すでに用意されていた食事には(できるだけ)手をつけない
・その国・地域の危険情報・トラブルなどは事前に頭に入れておく
・お金持ってそうな服を着ない(日本人はただでさえターゲットになりやすい)

 

20年前と今では時代がだいぶ変わっているので、新しいトラブルの手口も増えているだろう。情報収集はしっかりしようと思う。

 

これで今回の拉致軟禁シリーズは終わりです。

皆さん、旅行中のトラブルは十分気をつけて、旅を楽しみましょう☆

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